現在流通している宝石のなかには、色や透明度などをより美しく見せるため、さまざまな処理が施されたものがあります。
しかし「処理された宝石」と聞くと、
「価値が下がってしまうのでは?」
と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、宝石があしらわれたジュエリーの購入を考えている方に向けて、宝石に処理をする目的と、代表的な処理の方法について解説します。
なお宝石の世界では、原石を削って形を整えるカットや研磨を「加工」、色や透明度そのものを変える手を「処理」と呼び分けます。この記事で扱うのは後者の「処理」です。
価値ある宝石を納得して購入するために、ぜひ参考にしてくださいね。
宝石はなぜ処理される?処理石の目的と価値の考え方

宝石の処理には、おもに以下3つの目的があります。
- 宝石の色を変える・引き立てる
- 宝石の透明度や輝きを高める
- 宝石の耐久性を高める
見た目や耐久性を高めるために行われる処理ですが、処理の内容によっては価値が下がらないものも多く存在します。
宝石本来の美しさや特性を引き出すための処理であれば、宝石の価値が大きく下がることはありません。
しかし、本来の宝石とかけ離れるほど手が加えられた処理の場合は、価値が下がってしまいます。
さらに同じ処理でも、宝石によって合う合わないがあります。
処理がされているかどうかの見きわめは、専門家でも難しいことがあり、判断を誤ると宝石の本当の価値を見誤ることにもなりかねません。
そのため、アメリカをはじめとした各国では、宝石にどんな処理がされているかを買い手に伝えるルールが定められています。
日本でも、宝石鑑別団体協議会(AGL)に加盟する機関が発行する鑑別書には、その石にどんな処理がされているかが検査結果の欄に記載されます。
よく似た名前の書類に鑑定書がありますが、こちらはダイヤモンドの品質を評価したもので、役割が違います。色石の処理を確かめたいときに見るのは鑑別書のほうです。
処理の種類や方法を知っておくと、この書類が読めるようになりますよ。
宝石に施される代表的な8つの処理方法
宝石の処理には、代表的なものとして下記8つがあります。
- 加熱処理
- ベリリウム拡散加熱処理
- 含浸処理・ガラス充填処理
- 放射線照射処理
- 染色処理
- コーティング処理
- 高温高圧処理
- レーザードリル処理
以下で順に説明します。
(1)加熱処理
古くからあるもっともメジャーな処理方法。
宝石本来の発色理由ともいわれる、地熱などの自然現象を人工的に再現したもので、素材を引き立たせる方法です。
代表的な宝石には、ルビー、サファイア、タンザナイト、アクアマリンなどがあります。
とくにルビーやサファイアは、市場に出回るもののほとんどが加熱処理をされています。そのため加熱処理そのものは、価値を大きく下げるものとは考えられていません。
(2)ベリリウム拡散加熱処理
加熱処理の一種ですが、加熱する過程でベリリウムを含む物質を石と一緒に置き、高温のもとでベリリウムを石の内部まで浸透させて色を変える方法です。
宝石本来の発色を人工的に変化させるため、見た目は美しくなりますが、天然の色として評価される石にくらべると価値は大きく下がります。
代表的な宝石は、サファイアやルビーなどです。
「パパラチアサファイア」として販売されている石でも、ベリリウム拡散加熱処理が施されているものは、天然の色のパパラチアサファイアとは価値がまったく変わります。鑑別書で処理の有無を確かめてから選びましょう。
(3)含浸(がんしん)処理・ガラス充填処理
宝石のキズにオイルや樹脂を注入し、キズを目立たせないようにする処理方法。
エメラルドはキズや内包物が多い石で、市場のものはほとんどにオイルの含浸がされています。そのため含浸そのものがただちに価値を下げるわけではありませんが、入っているオイルの量によって「少ない・中程度・多い」と段階が分けられ、量が少ないほど高く評価されます。
いっぽう、ルビーやサファイアなどに鉛ガラスを充填する処理がされている場合は、宝石としての評価は大きく下がります。購入時には注意しましょう。
なお、ターコイズやヒスイに行われるのは樹脂を染みこませる含浸で、エメラルドのオイルとは性質が異なります。
代表的な宝石は、ターコイズ、ヒスイ、エメラルド、ルビー、サファイアなどです。
(4)放射線照射処理
発色の悪い宝石に放射線を照射し、人工的に変色させる処理方法です。
多くの宝石では一般的な処理方法であり、必ずしも価値が下がる処理ではありません。
ただし、放射線照射で色をつけたダイヤモンドは処理石として扱われ、天然のまま色がついたダイヤモンドにくらべると価値は大幅に下がります。
鑑別では、天然の色か処理でついた色かを必ず区別して記載します。「カラーダイヤモンド」という呼び方は天然の色がついたダイヤモンドを指して使われることが多いため、処理石と混同しないよう気を付けましょう。
代表的な宝石は、トルマリン・トパーズ・パール・ダイヤモンドなどです。
(5)染色処理
人工的な色素を使い宝石に着色させる処理方法。
まれに、染色したことで別の宝石と偽り高値で販売されることがあるため、鑑定書などでしっかり確認しましょう。
ただ、めずらしい色の宝石も多く存在するため、価格を納得できるのであればバリエーション豊かなカラーを楽しめます。
代表的な宝石は、ターコイズ・ラピスラズリ・ヒスイ・メノウ・パールなどです。
(6)コーティング処理
染色処理とは異なり、宝石の表面にほかの物質の膜を張って、色や光沢を変える処理方法。
チタンなどの金属を蒸発させて薄い膜として付着させる方法のほか、炭素の膜を張るものなど、複数の方式があります。
代表的な宝石は、ヒスイ・コーラル・トパーズなどです。
(7)高温高圧処理
人工的に、宝石を高温高圧の状態に置くことで、変色させます。
ダイヤモンドの場合、無色・ピンク・ブルー・イエロー・青リンゴのような緑色になるのが特徴。
代表的な宝石は、ダイヤモンド・サファイアです。
(8)レーザードリル処理
レーザーの熱に耐えられることから、ほぼダイヤモンドにだけ行われる処理方法です。
ダイヤモンドの内部にある黒い内包物まで、レーザー光線で細い穴をあけ、そこから薬品を入れて漂白します。
レーザードリル処理が施されたダイヤモンドは、宝石としての評価は下がりますが、見た目の美しさを重視する方にとっては、価格面でのメリットがあります。
このほかにも、色を抜く「漂白」、石の表面近くだけを染める「表面拡散処理」、表面のざらつきを埋めてツヤを出す「含浸ワックス」など、処理の種類は多岐にわたります。
気になる石があるときは、鑑別書でどんな処理がされているかを確かめるのが確実です。
まとめ|宝石の処理を知ることが、後悔しないジュエリー選びにつながる

処理がされているからといって、価値の低い宝石と決まったわけではありません。
その宝石に合った処理がされているものは、価値が落ちるどころか、より美しく、より扱いやすくなっています。
宝石があしらわれたジュエリーを選ぶ際には、鑑別書でどんな処理がされているかを確認し、その価値を正しく理解したうえで購入しましょう。
当店では、処理についてもご納得いただけるよう、適正価格のジュエリーを数多く取り揃えております。
不安や疑問はどんなことでもお気軽にお問い合わせください。
当店が自信をもってジュエリー選びのお手伝いをさせていただきます。
石にまつわる話は、ほかの記事にもまとめてあります。石の見え方でわかる宝石の話まとめもあわせてどうぞ。