仕事柄、私はずいぶんたくさんのジュエリーを、ファインダー越しに見てきました。撮影台に置かれた一点を、ライトの角度を少しずつ変えながら、レンズで何百枚と覗き込む。それが、私のいつもの毎日です。
そのうえ、プライベートでも石が好きで困っていて。ルースを集めるくらいなら可愛いもので、最近はなんだか、磨く前の原石まで手元に転がっている始末です。

そんな石漬けの私が、撮影中にふと手が止まってしまった一点があります。ブシュロンのセルパンボエム、色石のリングです。正直に言うと、この子たちを最初に見られたのが私だったというのは、ちょっと職権乱用だなあと思っています。それくらい、ファインダーの向こうで光った瞬間に、しずかに心を持っていかれてしまいました。

今回はその話をさせてください。
この色石、どれを撮っても"ハズレ"がない
色石というのは、本来ひとつとして同じ顔をしていません。同じ名前の石でも、産地や個体で、色の濃さも内包物の入り方も変わってくる。だから撮影の現場では、「この個体はちょっと色が浅いなあ」とか「ここに目立つ傷があるなあ」と感じることが、正直、わりとよくあります。
ところがブシュロンの色石は、それが、ないんですよね。

何点撮らせてもらっても、目を疑うくらい品質が揃っていて。色の深さも、石の澄み方も、置いてある向きを変えても、ついつい惚れ惚れしちゃいます。これはきっと偶然じゃなくて、メゾンが「ここから先しか使わない」という線を、ずいぶん高いところに引いている、ということなんでしょうね。

石を選ぶ目線で世界中の素材を見てきた人たちが、最後の最後で選び抜いたものだけが、残っている。撮る側からすると、これがどれだけ贅沢なことか、しみじみ思います。
回すと表情が変わる。ペアシェイプの"裏の顔"
このリング、ぜひ一度、指の上でくるりと回してみてほしいんです。
セルパンボエムの色石は、ペアシェイプ――しずくのような形にカットされています。面白いのは、表と裏で石の見せ方が違うところ。同じ一石なのに、リングをくるりと回すと、なんだか光の入り方が変わって、まったく別の顔を見せてくれるんです。

撮影でいちばん時間をかけたのが、ここでした。光をどの角度で当てるかで、石の中の表情が、ふわりふわりと動くんです。落ち着いて見える瞬間と、ふっと火が入ったように輝く瞬間がある。同じ子を撮っているのに、シャッターを切るたびに違っていて。

身につける人もきっと、毎日違う表情に出会えると思います。手元をふと見たとき、昨日と違う光り方をしている。そういう小さな発見が、長く飽きずに付き合える理由になるんですよね。
私が惚れた二石|ガーネットの移り気、マラカイトの地層
今回どうしても紹介したいのが、二石。性格がまるで違うのに、どちらも私の心を、掴んで離してくれなくて。
移り気で飽きさせない、ロードライトガーネット

まずロードライトガーネット。これがなんとも移り気な子で、光の角度を少し変えるだけで、赤からピンク、そして紫がかった深い色へと、すうっと表情が動いていくんです。

撮っていて、ぜんぜん飽きないんですよね。一面を覚えたと思ったら、次の瞬間にはもう別の顔をしている。気まぐれで、つかみどころがなくて、それがなんだか、たまらなく愛おしい。身につける人のその日の気分や光に合わせて、ずっと違う一面を見せ続けてくれるはずです。
原石を集める私が痺れた、マラカイトの地層

そしてマラカイト。この子の縞模様を初めて覗き込んだとき、思わず、声がもれてしまって。

緑の濃淡が何層にも重なる縞は、なんだか、地層みたいだなあって。原石を集めている私からすると、この一本一本の層に、石が生まれてから今ここに来るまでの長い長い時間が、そっと閉じ込められているように見えるんです。石のルーツが、そのまま模様になっている、とでも言えばいいでしょうか。これは間違いなく、私の偏愛のど真ん中です。

マラカイトの縞も、ガーネットの内包物も、一点ごとにまったく違う。つまり、あなたが選んだその子は、世界に一つしかないんですよね。これは色石を身につける、いちばんの贅沢だと、しみじみ思っています。
重ねて、ねじって。蛇の鱗みたいなツイストチェーン
この二石、別々に語ってきましたけど、撮影では一度、思いきって指の上で重ねてみたんです。

マラカイトの深い緑と、ガーネットの赤紫。並べて重ねると、これがなんだか、ふしぎなくらい馴染むんですよね。とくにイエベ秋の肌色には、緑も赤紫もすっと溶け込んでくれる。深みのある色同士だから、ごちゃつかず、むしろ品よくまとまる。ファインダー越しに、思わず見入ってしまいました。

地金にも、ちょっと触れさせてください。セルパンボエムのチェーンは、ツイスト――ねじりを効かせたデザインで、これがなんだか、蛇の鱗みたいなんです。光を受けると、ねじれの一つひとつが細かく輝く。縁取りのミル打ちとも相性がよくて、流行り廃りのないクラシカルな雰囲気にまとまります。
だからこそ、長く付き合えるんですよね。今つけても可愛いし、40代、50代になってもきっと、手元にそっと寄り添ってくれる。セルパンボエムには「トワエモア」――あなたと私、二人で一つ、という意味も重ねられていて、二石を重ねる仕草が、そのまま物語になっていく。そんな気がするんです。
1968年から続く物語と、これから出会える色
セルパンボエムの始まりは1968年。創業者が大切な人へ、蛇のジュエリーを贈ったことが原点だと伝わっています。蛇は、身を守ってくれる存在。そこに込められた想いごと、今もそっと受け継がれているんですよね。
色石の顔ぶれは、時代ごとに少しずつ移り変わってきました。だからこそ「今ある色」は、永遠ではないんだなあと思います。

実は、今回いちばん惚れ込んだマラカイトは、撮影のあと、店頭でお客様のもとへ旅立っていきました。マラカイトそのものも2025年で生産終了になっているので、あの地層みたいな縞を、これから新しく仕立てることは、もうできないんです。原石を集めて、廃盤を惜しむ性分の私からすると、これがなんだか、しみじみ寂しくて。
でも、だからこそ。もう手に入らないあのマラカイトを、ガーネットと並べてファインダーに収められたあの撮影は、今思い返しても、ちょっと胸が高鳴るくらいの時間でした。二度と撮れない組み合わせを、最後に光ごと残せたこと。これは職権乱用と言われても、役得だったなあと、しみじみ思っています。

そしてじつは、今いちばん撮りたい色が、もうひとつあるんです。新作のオニキス。あの深い黒と、ガーネットの赤紫を重ねたら、赤×黒の、すこし大人っぽくてかっこいいコーディネートになるはず。想像するだけで、なんだか、わくわくしてしまって。店頭に入荷したら、まっさきにレンズを向けるつもりです。
オニキスは今のところ、パリへのオーダーになりますが、ご注文はちゃんと承れますよ。当店でも、すでに多くのお客様にご予約いただいている色なんです。気になっている方は、ぜひ一度、お問い合わせくださいね。あなたの一本を待つところから、一緒に始めさせてほしいんです。
ガーネットのほうは、今もしずかに、あなたとの出会いを待っています。お支払いは、最大100回まで金利0円のローンもご用意していますので、月々3,300円から、無理のないかたちでお迎えいただけますよ。在庫やオーダーの状況とあわせて、どうぞお気軽にお問い合わせください。