Column
2026年08月05日
第79回カンヌ国際映画祭。世界中の映画人とジャーナリストの視線が注がれるパレ・デ・フェスティバルの階段に、松たか子さんが立ったのは2026年5月13日のこと。長くキャリアを重ねてきた女優にとって、初めての"カンヌ"。その晴れ舞台に寄り添ったのは、フランスの老舗ジュエラー、ブシュロンでした。 凛とした立ち姿。深いブラックのドレスからのぞく、繊細な輝き。彼女の選択は、奇抜さや派手さで主張するものではなく、自身の雰囲気に静かに溶け込むものでした。今回は、松さんがレッドカーペットで纏ったブシュロンのジュエリーと、そこに連なる現行コレクションの世界を、女性誌の目線で丁寧にご紹介します。 松たか子さん、第79回カンヌ国際映画祭で世界の舞台へ 松たか子さんがカンヌの地を踏んだのは、深田晃司監督の最新作『ナギダイアリー』が公式コンペティション部門に選出されたことによるもの。岡山県奈義町を舞台に、過去の恋の影と向き合いながら作品を彫り続ける彫刻家を演じた一作です。共演の石橋静河さんとともに現地入りし、5月13日のレッドカーペット、翌14日のフォトコールへと臨みました。 報道によれば、上映後の会場では約7分にわたるスタンディングオベーションが起こったといいます。長く日本の映画と舞台を支えてきた松さんにとって、海外の観客から直接届けられる拍手の波は、これまでとは違う種類の感慨だったはず。「華やかなエネルギーを感じています」というご本人のコメントには、新しい扉を開いた女優の率直な高揚が滲んでいました。 円熟期を迎えた今、女優としての厚みをいっそう深めた今だからこそ似合う、世界の舞台。日本を代表する一人がパリの老舗メゾンを纏って臨んだその姿は、同世代の女性たちにも特別な意味を持って届いたのだと思います。 レッドカーペットで纏ったブシュロンとアルマーニ レッドカーペットでの松たか子さんは、ジョルジオ アルマーニのブラックドレスを選びました。デコルテのラインを大胆に開きながらも、品の良さを一切損なわないシルエット。黒という色の強さに頼り切らず、端正な生地のドレープが大人の肌を美しく見せる仕立てです。 そこに合わせられたジュエリーが、ブシュロン「キャトル ラディアント エディション」の一式でした。ホワイトゴールドとダイヤモンドで構成された複数のリングは、グログランのモチーフを織り込んだバージョンとフルパヴェのバージョンを重ねづけ。指先で小さく、しかし確かに光るその輝きは、ドレスの黒と互いを引き立て合っていました。耳元には同じくキャトル ラディアントのイヤリングを添え、首回りは敢えて潔く抜いて、足し算ではなく引き算の美意識が、松さんらしいバランス感覚で完成されていました。 ハイジュエリーが過剰な存在感を放つカンヌの舞台にあって、彼女の選択は驚くほど静かでした。けれど、その静けさにこそ、長く第一線で活躍してきた女優の自信がにじんでいたように思います。 翌日のフォトコールでは一転、アライアの晴れやかなブルードレスへと衣装を替え、地中海の陽光を受けたブシュロンの輝きがいっそう艶やかに映えていました。 石橋静河さんとの初フォトコール 同じく初カンヌとなる石橋静河さんも、松さんと並んでフォトコールに参加しました。ルイ・ヴィトンのロングドレスにカルティエのハイジュエリーを合わせた初日、白いマメ クロゴウチのドレスを纏った二日目と、こちらも世代を代表するスタイリングで世界の眼差しを受け止めていました。 世代も雰囲気も異なる二人の女優が、同じ日本映画を背負って並んだ瞬間。それぞれが選んだ装いの違いさえ、作品の世界観を奥行きあるものに見せていたのが印象的でした。 松たか子さんが選んだブシュロン キャトル | 1858年から続くフレンチアイコン 松たか子さんが今回選んだのは、ブシュロンを代表するコレクション「キャトル(Quatre)」。フランス語で”4”を意味するこの名前は、グログラン、クル ド パリ、ダブルゴドロン、ダイヤモンドラインという4つの象徴的なモチーフをひとつのリングの中に重ねるという発想に由来しています。 1858年、フレデリック・ブシュロンがパリのパレ・ロワイヤルに最初のブティックを構えてから、世紀を超えて受け継がれてきたメゾンの世界観。1893年にはヴァンドーム広場26番地へと本店を移し、ハイジュエラーとしてこの地に最初に居を構えたメゾンとなりました。広場に降り注ぐ光を最も長く受ける角地で生まれてきたジュエリーには、太陽の動きを計算した造形美がいまも受け継がれています。 キャトルが誕生したのは2004年。ブランドの歴史の象徴を一本のリングに凝縮するという挑戦は、瞬く間にブシュロンの新たな顔となりました。装飾を削ぎ落とした幾何学的な美しさと、肌に重ねたときの存在感。シンプルさの中に芯の強さを感じさせる表現は、松たか子さんという女優の魅力とも静かに重なります。 派手さで主張するのではなく、自分自身の芯を曲げない女性に選ばれるジュエリー。それがキャトルです。...
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松たか子がカンヌ初登場で纏ったブシュロン|キャトルの輝きで魅せたレッドカーペット