名前を聞いただけで色が浮かぶ宝石は、そう多くありません。誕生石一覧の3月の欄でまっさきに名前が挙がるアクアマリンは、その数少ないひとつです。
ところが、その青がどこから来ているのかとなると、あまり語られません。エメラルドやモルガナイトと同じ鉱物の仲間だということも、案外知られていない話です。
「傷つきやすい」という誤解も含めて、鉱物としての素性からたどっていきます。
アクアマリンとは

アクアマリンは、ベリル(緑柱石)という鉱物の変種です。ベリルのなかで、青から緑がかった青の色を持つものがアクアマリンです。
和名は藍玉。緑柱石はベリル全般を指す呼び名なので、アクアマリンだけの名前ではありません。
産出量が世界でいちばん多いのはブラジル。なかでもミナスジェライス州は、アクアマリンの産地としてよく知られています。
エメラルドやモルガナイトと同じベリル
ベリルという鉱物は、ごくわずかに混ざる成分によって色を変えます。緑になればエメラルド、ピンクになればモルガナイト、青になればアクアマリンです。
三者は、いわば色違いの兄弟。もとをたどれば同じ鉱物で、色ごとに別の宝石名が付いているだけです。
ただし、同じ鉱物だからといって性質まで同じとは限りません。エメラルドについて言われることが、そのままアクアマリンに当てはまるわけではないのです。
あの青をつくっているのは鉄
アクアマリンの青は、結晶にごくわずかに含まれる鉄によるものです。
青を受け持つのは2価の鉄(Fe²⁺)、黄色を受け持つのは3価の鉄(Fe³⁺)。同じ鉄でも、状態が変われば出てくる色も変わります。
この2つが合わさると、青のなかに黄色が差して、緑がかった青になります。アクアマリンの色に幅があるのは、そのためです。
黄色みを取り除くと、あの青になります
黄色を担っているのは3価の鉄。ならば、その状態を変えてしまえば黄色みは抜けます。
この理屈をそのまま工程にしたのが、アクアマリンの加熱処理です。およそ400〜450℃の熱を加えると、鉄の酸化状態が変わります。これで黄色みが抜けて、より純粋な青になるのです。
黄色みが抜けたぶん、緑に寄っていた色みが青のほうへ落ち着きます。
市場に出るアクアマリンでは、これがごく一般的な工程。宝石の世界でも広く受け入れられていて、色の変化は恒久的です。
青を足すのではなく、黄色を引く。加熱処理でしていることは、それだけです。
モース硬度7.5〜8|ふだん使いできる硬さ
アクアマリンのモース硬度は7.5〜8。宝石のなかでは硬い部類で、日常的に身につけられる硬さです。
「アクアマリンは傷が付きやすい」という説明を見かけることがありますが、硬度から見るかぎりそうではありません。
エメラルドと同じベリルだから、採掘の時点ですでに傷が入っている――そう書かれることもあります。ただ、内包物が多いのはエメラルドの特徴。アクアマリンにそのまま当てはめられる話ではありません。
毎日身につける指輪やネックレスにも向く硬さ。3月生まれの方への贈り物が日常の一本になっても、扱いに神経を使わずにすみます。
ふだんのお手入れ
お手入れはかんたん。やわらかい布で拭いておけば、それで足ります。
硬さのある石なので、扱いに細かな決まりごとはありません。落ちにくい汚れが気になったときだけ、購入したお店に相談すると安心です。
海の水という名前と、サンタマリアの青
名前の由来はラテン語の aqua marina。訳せば「海の水」です。
海にまつわる言い伝えも残っています。海の精の宝物が浜辺に打ち上げられた――ギリシャ神話に伝わるその宝物こそがアクアマリンだと、語り継がれてきました。
「コミュニケーションの石」という異名でも呼ばれてきた石です。
もうひとつ、耳にすることの多いのが「サンタマリア」という呼び方。ブラジル・ミナスジェライス州にある Santa Maria de Itabira 鉱山の名前から来ています。
この鉱山で採れた、濃く鮮やかな青に付けられた呼び名。いまでは産地を問わず、その色みを指す言葉として使われています。
アクアマリンは3月の誕生石
日本の3月の誕生石は、アクアマリン、サンゴ、ブラッドストーン、アイオライトの4つです。
このうちアクアマリンとサンゴは、以前から3月の誕生石。2021年12月20日の改訂で新しく加わったのが、ブラッドストーンとアイオライトの2つです。
アクアマリンの石言葉は「幸福」「富」「聡明」の3つ。穏やかで前向きな3語がそろっています。
贈る相手が3月生まれなら、石言葉ごと手渡せる贈り物。海の名前を持つ青は、季節を選ばずに着けられます。
あわせて知りたい、3月の誕生石
3月生まれの方には、選択肢が4つ。ここからはアクアマリン以外の3つを、いつから3月の石なのかという目で見ていきます。
ブラッドストーン
2021年に3月へ加わった、新しい2つのうちの片方。鉱物としてはカルセドニーの一種で、深い緑のなかに赤い斑点が散ります。
石言葉は「勇敢」「献身」「救いの力」。3月の4つのなかでは、いちばん強い言葉が付いています。
アイオライト
アイオライトも、2021年に加わった2つのうちの1つ。見る向きによって色が変わる、多色性の強さで知られています。
石言葉は「誠実」「貞操」の2語。数は少ないぶん、言葉の輪郭がはっきりしています。
サンゴ(コーラル)
以前から3月の誕生石だったのは、アクアマリンとこのサンゴ(コーラル)です。石言葉は「確実な成長」「家長の威厳」「長寿」「聡明」「幸福」の5つとされています。
まとめ|3月の誕生石アクアマリン
アクアマリンは、ベリルという鉱物の青い変種。その青をつくっているのは微量の鉄で、黄色みを取り除く加熱処理によって、より純粋な青に整えられています。
名前の由来はラテン語の「海の水」。サンタマリアという呼び方も、産地ではなく色みを指す言葉です。
そしてモース硬度は7.5〜8。傷つきやすい石という説明は、この数字と合いません。
毎日つける指輪でも、仕事の日のネックレスでも問題のない硬さ。3月の青は、しまい込まずに着けていられる石です。