昼の光の下では緑から青緑、白熱灯やろうそくの灯りの下では赤から赤紫。同じ石でこれだけ色が入れ替わるのが、日本の誕生石一覧に名前のある6月の誕生石、アレキサンドライトです。
6月の誕生石は、真珠とムーンストーン、そしてアレキサンドライトの3つ。このうちアレキサンドライトが加わったのは、2021年の改訂でのことです。変色効果と呼ばれる色の入れ替わりが、いちばんの特徴になっています。
アレキサンドライトとは

クリソベリル(BeAl2O4)という鉱物の変種。それがアレキサンドライトです。
モース硬度は8.5と、ダイヤモンド(10)とコランダム(9)に次ぐ硬さです。
緑から青緑、そして赤から赤紫へ。アレキサンドライトの色は、当たる光によって行き来します。
朝の窓辺と、夜のろうそくの灯り。同じ石を見ていても、手もとに映る色が変わります。
キャッツ・アイと同じクリソベリル
同じクリソベリルでも、猫目効果を示すものは2月の誕生石クリソベリル・キャッツ・アイ、変色効果を示すものがアレキサンドライトです。
2月の誕生石「クリソベリル・キャッツ・アイ」をもっと詳しく見る
緑から赤へ、色が入れ替わるしくみ
色を動かしているのは、ごく微量のクロム。クリソベリルの結晶のなかで、本来アルミニウムが入る位置にクロム(Cr3+)が入り込んでいます。
このクロムには、黄色付近の波長を強く吸収するはたらきがあります。そのために起きるのが、緑側と赤側の入れ替わりです。
どちらが強く見えるかを決めるのが、当てる光の色み。白い昼の光の下では緑側が、赤みを帯びた白熱灯やろうそくの灯りの下では赤側が前に出ます。
その結果、昼光下では緑から青緑、夜の灯りの下では赤から赤紫。石そのものが変わったわけではなく、見えている色の内訳が入れ替わっているだけです。
同じ石を、違う光のもとで2度見る。アレキサンドライトの見どころは、その2度目にあります。
この2つの見え方から、アレキサンドライトは「昼のエメラルド、夜のルビー」と称されることがあります。
ウラルで見つかり、皇帝の名を得た石
見つかったのは、1830年代のロシア。ウラル山脈のトコバヤ川流域にある、エメラルド鉱山からでした。
名前の由来は、ロシア皇帝アレクサンドル2世。その名を受け取って、アレキサンドライトと呼ばれるようになりました。
名前の由来には、もうひとつ添えられてきた話があります。発見された日にまつわる言い伝えです。
1834年4月17日、アレクサンドル2世が16歳の誕生日を迎えたその日に見つかった――そんな言い伝えも残されています。日付まで確かめられる話ではありませんが、名前の由来として長く語り継がれてきました。
緑と赤という組み合わせも、この石をロシアで特別なものにしました。当時の帝政ロシアの色と重なっていたためです。
石の色と、国の色。偶然の重なりが、アレキサンドライトをロシアと結びつけました。
産地はいま、ロシアの外にあります
発見の地であるウラルの鉱床は、その後産出が細っていきました。いま主な産地として名前が挙がるのは、ロシアの外の国々です。
スリランカ、ブラジル、インド、タンザニア、マダガスカル。1980年代以降には、ブラジルが主要産地になった時期もあります。
ブラジルで名前が挙がるのは、ミナスジェライス州のエマティータ鉱床。名前の由来はロシアにありながら、産地はいくつもの国に分かれています。
アレキサンドライトは6月の誕生石
日本の6月の誕生石は、真珠とムーンストーン、アレキサンドライトの3つです。
6月にアレキサンドライトが加わったのは、2021年12月20日。63年ぶりの見直しで10の石が誕生石に加わり、全体では計29石になりました。
石言葉は「高貴」「誕生」「出発」。気位の高さと、これから始まる時間を指す3語です。
「高貴」は、皇帝の名を受け取ったこの石の歩みと重なります。残る「誕生」と「出発」は、どちらも先のほうを向いた言葉です。
あわせて知りたい、6月の誕生石
6月に名前が並ぶのは3石。真珠とムーンストーンは以前から、アレキサンドライトは2021年から6月の欄にあります。石言葉の向きも、3石でそれぞれ違います。
真珠(パール)
真珠は、改訂より前から6月の誕生石でした。2021年の改訂を経ても、6月の欄から動いていません。
石言葉は「健康」「長寿」「富」。暮らしの土台にあたる言葉がそろっています。
ムーンストーン
ムーンストーンも、2021年より前から6月の誕生石です。真珠とともに、長いあいだ6月を受け持ってきました。
石言葉は「純粋な愛」「恋の予感」「健康」「長寿」「幸運」の5語。真珠より語数が多く、恋にまつわる言葉が加わります。
まとめ|6月の誕生石アレキサンドライト
クリソベリルの変種であるアレキサンドライト。ごく微量のクロムが黄色付近の波長を吸収することで、昼は緑から青緑、夜の灯りの下では赤から赤紫に見えます。
2021年12月20日、63年ぶりの改訂で6月の誕生石に加わりました。石言葉は「高貴」「誕生」「出発」です。
名前の由来をたどると、1830年代のウラルとロシア皇帝アレクサンドル2世に行き着きます。
そのウラルの鉱床は、いまでは産出が細っています。手もとに届くアレキサンドライトは、スリランカやブラジル、インド、タンザニア、マダガスカルから運ばれてきたものです。
名前はロシアの皇帝から、石はロシアの外から。アレキサンドライトの現在地は、発見から今日までのあいだにすっかり移りました。