光の散り方を示す数字で、ダイヤモンドを上回る石があります。誕生石一覧の7月の欄に、ルビーと並んで名前が置かれているスフェーンです。
分散度はおよそ0.051。ダイヤモンドの0.044を、はっきり超えています。
それでいて、スフェーンという名前をここではじめて目にする方も多いはずです。
0.051という数字の中身を、鉱物としての成り立ちから説明します。
スフェーンとは

鉱物としての名前はチタナイト。それが宝石として扱われるときの呼び名が、スフェーンです。化学式は CaTiSiO5 で、カルシウム、チタン、ケイ素からできています。
鉱物名と宝石名が別々にある石です。
産地はマダガスカル、パキスタン、ロシア、ブラジル。パキスタンではシガールやトルミク渓谷、ロシアではウラル、ブラジルではミナスジェライス州が知られています。
カナダ、メキシコ、スリランカ、オーストリアからも産出します。
クロムを含んで鮮やかな緑になったものは、クロムスフェーンと呼ばれます。
鉱物名はチタナイト|和名はくさび石
スフェーンという名前は、ギリシャ語の sphenos から来ています。意味は「くさび」。結晶が楔の形に育つことに由来する名前です。
和名はくさび石。こちらも結晶の形を写しとった呼び方で、語源の意味とぴたりとそろいます。
和名には、チタン石という呼び方もあります。
ダイヤモンドを上回る分散度
スフェーンの分散度は、およそ0.051です。ダイヤモンドの0.044を上回ります。
分散度は、ファイヤと呼ばれる虹色の輝きがどれだけ強く出るかを示す数値。数字が大きいほど、光は色に分かれて見えます。
石を動かすたび、赤や緑の光がちらりと顔を出します。ファイヤと呼ばれているのは、その見え方です。
押さえておきたいのは、その数字がどこから生まれるのかという点。分散は、石が生まれつき持っている光学的な性質です。
透明度が高いから虹色が強い、丁寧に研磨したからファイヤが出る――そうした説明を見かけることもあります。
ただ、そういう関係ではありません。0.051という数字は、チタナイトという鉱物そのものに属します。透明度や研磨の丁寧さは、あとからこの数字を動かせません。
光沢は樹脂光沢から金剛光沢
光沢の呼び方も決まっています。スフェーンの光沢は樹脂光沢から金剛光沢。金剛光沢は、アダマンティンとも呼ばれます。
磨き上げればダイヤモンドの光沢に近づく、という話ではありません。石がもともと持っている見え方に、名前が付いているだけです。
モース硬度5〜5.5|やわらかい石との付き合い方
スフェーンのモース硬度は5〜5.5。宝石のなかでは、やわらかい部類に入ります。
この数字が効いてくるのは、身につける場所を決めるときです。ものに当たりやすい位置は、この石には向きません。
心配なのは、硬いものと当たったときです。ドアの縁、机の角、バッグの金具。身のまわりには、思いのほか硬いものがあります。
ぶつける心配の少ないペンダントやイヤリングなら、やわらかさが不利になりにくくなります。
やわらかいぶん、カットにも研磨にも神経を使う石。職人泣かせと呼ばれてきた理由は、この硬度にあります。
見る向きで色が違う、という性質
スフェーンは、多色性の強い石。向きを変えると、ほぼ無色、黄から緑、赤から黄橙という3方向の色が姿を見せます。
ときどき混同されますが、これは光源で色が入れ替わる変色効果ではありません。あくまで、石を見る角度によって表に出る色が違う、という性質です。
スフェーンは7月の誕生石
日本の7月の誕生石は、ルビーとスフェーンの2つ。長く7月の石だったルビーの隣に、スフェーンが並びました。
スフェーンが7月の欄に入ったのは、2021年12月20日の改訂。63年ぶりの見直しで10石が加わり、日本の誕生石は計29石になりました。
スフェーンの石言葉は「純粋」「永久不変」の2語です。
混じり気のなさと、変わらないこと。強いファイヤを放つ石に、静かな2語が付いています。
あわせて知りたい、7月の誕生石
7月の誕生石は2つ。スフェーンとルビーでは、語られてきた魅力の方向がまるで違います。
片方は光の散り方で名前を知られ、もう片方は色で知られてきました。同じ月の欄に、対照的な2石が並びます。
ルビー
ルビーの名前を支えてきたのは、あの深い赤です。7月の欄には、改訂よりも前から名前が置かれていました。
石言葉は「情熱」「良縁」「勝利」の3つ。前へ進む力を思わせる言葉が並びます。
まとめ|7月の誕生石スフェーン
スフェーンの分散度はおよそ0.051。ダイヤモンドの0.044を上回る数字が、この石のいちばんの特徴です。
その数字は石が生まれつき持っているもので、透明度や研磨の丁寧さから生まれるものではありません。光沢も同じで、樹脂光沢から金剛光沢と決まっています。
向きを変えれば、見える色も変わります。ほぼ無色、黄から緑、赤から黄橙という3方向を持つ、多色性の強い石です。
モース硬度は5〜5.5。やわらかい部類なので、ものに当たりやすい場所は避けて身につけたい石です。
石言葉は「純粋」「永久不変」。7月の欄には、ルビーと並んでこの名前があります。
名前のもとは、ギリシャ語で「くさび」を意味する sphenos。和名のくさび石も、楔の形に育つ結晶から付いています。
強いファイヤを見せる石の名前は、輝きではなく結晶の形から取られました。